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日記
diary


10月4日月曜
Fourth of October,Monday



ベック


ベックの折衷性はきわめてアメリカ的だ。

ベックのファーストアルバムはMellow Goldというアルバムだった。
そのタイトルは、ドノヴァンのMellow Yellowというアルバムを
ぼくに思い出させた。
ドノヴァンは当時よくボブディランと比較されていた
ヒッピーに人気のフォークロックアーティストだった。

ベックは初めからウディガスリーなどの社会性の強いアーティスト
からの影響を明言していたし、ゼムやDr.Johnなどアイリッシュや南部
のアーティストからサンプリングして曲を作っていた。

ベトナム戦争を戦っていたアメリカにとって
ボブディランが歌ったことは当時とても重く響いたに違いない。
そのアクチュアリティを多分ベックは引きうけようとしている。


Loserではスペイン語とドイツ語をちりばめて曲を作った。
もちろんラップしている。
マドンナも前のアルバムでラップしてたよね。
プライマルスクリームのボビーギレスピーもしてたな。
あまり評判にならなかったけど。
いまでこそ普通だけど、当時ロックやポップスのアーティストが
ラップをするのは珍しかった。(特にカレッジ系)
しかもそれでチャートのトップを取るのはね。
(いまだにアメリカ以外では少ないのかも)

ブロンディのデボラ・ハリーは早かったけど、
彼女はバスキアとかと友達だったし。
ビースティは冴えてるから置くとして。
G-LOVEとジョン・スペンサーぐらい?
クリスクロスは子供デュオだし。

ライヴでは下手っくそなブレイクダンスを
DJスワンプの前で披露していた。
(スワンプはユニクロのCMにも一度出たアホなDJ‐かっこいいよ)

普通ヒップホップでは、いかに自分がクールかをラップするけど、
まぁ、ベックの場合は白人だしチビだし、
ヒップホップというフォーマットを使って新しい表現を志向していた。
ブルースとフォークからのサンプリングも
G-loveなんかと一緒で当時の流行りだった。
でも、ベックのサンプリングセンスは群を抜いていた気がする。

Midnight Vulturesではプリンスとザッパとディランが
よく引き合いに出されていた。

すこし強弁すればエレクトロクラッシュを先駆けていた。
エレクトロクラッシュはすごくアメリカっぽいよね。
NYの時代の象徴みたいなカテゴリーだ。MTV

プリンスが黒人のゲイで、ディランがユダヤ出のヒッピー、
ザッパが東欧出身の国籍不明音楽を奏でるカリフォルニアの
アンチヒッピー。

かつてフロイトがNYを訪れたときに
「アメリカはユダヤ人と黒人の国だ」と言ったそうだ。

そんな影響下に作り出される言葉と音は
逆説的にアメリカ以外の何物でもないだろう。


ベックのアメリカっぽさはビートにも顕れている。

ベックは四つ打ちを使わない。
リミックスは確認してないけど
アルバムで使ったことは一度もない。

四つ打ちっていうのはテクノのドン、ドン、ドン、ドンという4分の4ビート。
ヨーロッパでテクノが人気があるのは、多分言語の違いを
認めた上で楽しめるからだ。

アメリカがテクノ恐怖症なのは、
ヒスパニック系マイノリティと東洋系マイノリティへの
潜在的恐怖を呼び起こすからだと思う。

アメリカはそもそも分裂症的な国だ。
国旗をみても法律をみても各州が独立した様子をみてとれる。
(日の丸と比較して!)

そのなかで国をまとめていくには
一つの言語が前提にならざるえないだろう。

loserでドイツ語とスペイン語を使ったのは
それがアメリカにおいて負け犬の言語だからでもある。


ぼくがベックを好きなのは、loserのように敗者への共感を示しつつ
それに留まらないところだ。

ファーストアルバムの成功以来
かれはセレブリティだし、もう若者の共感は得られない。
けれど、偉くなったら偉くなったで
やらなきゃいけないことっていうのはたくさんある。
そしてその仕事を果たすことが、より多くの人を助けることが明らかなら
やらなければならないだろう。

かれは勝者になることを恐れない。
そして社会階梯をのぼることで付け加えられる義務を
「めんどくさい」と愚痴をこぼしながらもちゃんと引き受けている。
カート・コバーンのように死んだりしない。
死なれると困るんだよなー
まぁ、それも一つのやり方だけどさ。

そこそこ売ってレコード会社の契約を履行しなきゃいけないし、
地方のファンのためにツアーもしなきゃいけないだろう。
かれのように成功するひとは限られている。

その幸運に感謝するなら、社会から与えられた役割を
誠実に受け止めるべきだ。
そしてリスナーのなかには必ず理解してくれる人がいるはずだ。

実際、Sea changeのなかにもエクスキューズをしているように
受けとめられる曲もある。
作品のなかでaccountability(説明責任)を果たそうとしている。
アーティストなら当然だろう。
その言い訳に筋が通っているかは他のだれもわからないけど。

「ベックなんてインチキだよ」って、友達が言っていたけれど
こういうことをいっているひとはもう少し大人になったほうがいいかも。
一生負け犬でいてくれ。その境遇を恨まないこと。
自分で選んでるんだから。

ぼくは出来れば彼の社会保障費用とか払った税金で負担したくないよ。
そういう人が増えれば、治安も悪くなるから金持ちも困るんだけどさ。
そしたらしっかりした人しかいない国に住みたいよ。
でもこんなことも言いたくないから隠れて引っ越すだろうな。
だから教育は重要かも。

Don't believe over 30なんて思ったことはぼくは一度もないんだ。
ザ・フーがマイジェネレーションで歌ったことだけど。

My generation(世代)よりもMutation(突然変異)のほうが
ぼくにはしっくりくる。
世代意識がぼくに希薄なのは
たぶん学校にあまり行かなかったからかな。

カリフォルニアのように自由に開かれすぎている土地で
世代意識なんてばかばかしいじゃない。
ぼくは純然たる埼玉育ちなんだけどw

ぼくが一番好きなベックのアルバムはMutationだ。
トロピカリアという曲。
ブラジルの国民的アーティスト、ジョルジ・ベンの曲をほぼ完全にパクってる。w
それがまた曲の特徴のおおらかさを示しているような。w
マシュケナダ作った人なんだけど。
もちろん詩作はベックがやってるけどね。でなきゃ意味ない。
あのアルバムが一番楽天的だったから好き。
だから今のぼくに必要なものかも、なんてね。

どこ行ったかな、あのアルバム。
別に大したアルバムじゃないんだけどさ。

レコ屋でバイトしてたとき、僕の働いてる店にベックが立ち寄ったことがある。
その時の格好がよれよれのチノパンに猫かトラの古着のT-シャツでね。
帽子被ってたけど。
キックボードに乗ってセンター街に来て。

クレジットカードは下4桁が0001だったからVIPカードみたいのだったのかな?
普通にweenとかのCD3枚ぐらい買っていった。
どこでも売ってるやんけって感じだったけど。
お腹出てたなー。
でも感動した。握手しちゃった。いいでしょ。




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